2015年5月号より
白川静・立命館大名誉教授が、ことしで生誕105周年を迎えることを記念し、4月の立命館土曜講座は「〈白川学入門〉白川静再読」をテーマに開かれた。
白川名誉教授は、1943年に立命館大法文学部を卒業後、同大で研究・教育活動に従事。漢字の字源研究を通して、中国古代の文化や思想を解明し、2004年には文化勲章を受章した。06年に逝去。
同講座では、白川名誉教授の代表的著作である『中国古代の文化』『孔子伝』『漢字』『中国の神話』を1講座につき1冊取り上げ、それぞれの専門家が解説した。
4月25日は、澁澤尚・福島大教授(漢文学・本草学)が、「『中国の神話』を読む」と題し講演。
澁澤教授は、白川名誉教授が、同書で体系性を欠く中国の神話を、日本やギリシャの神話と区別し「第三の神話」と位置付け、その原形を掘り起こしたと指摘。また「豊富な考古資料、甲骨文・金文の研究を縦横に駆使して中国古代の神話を発掘、復元した」と話した。
中国の神話には、異なる種族が持つ複数の洪水神話が、整理されることなく並存しているという特徴があり、それぞれの神々による神話の世界での闘争は、実は現実の種族間での闘争の反映だとする説などを解説した。
また「漢字の世界にも神話の世界が残存している」とし「漢字は我々日本人の精神と一体。現在、グローバル化などで漢字を捨て去ろうという風潮があるが、それは我々の精神も捨て去ることになる」と話した。
(福井優)