廃棄される野菜を活用し、その魅力を発信する学生がいる。学生団体「ラピスプライベート」を運営する山内瑠華さん(国関3)だ。活動を始めたきっかけや山内さんが考える今後の活動について取材を行った。
「おやさい」が主役 ラピスプライベートとは
ラピスプライベートは、山内さんが今年の1月に立ち上げた団体だ。「おやさい×アート」「おやさい×ファッション」「おやさい×ことば」をコンセプトに、高校生5人、大学生5人の計10人で活動を行う。主な活動として挙げられるのが「野菜を使った絵の具作り」だ。売り物にならず、捨てられてしまう野菜を使っているという。他にも野菜の色で染めたTシャツや野菜の形をモチーフにしたアクセサリー作りなど、精力的に活動を行っている。
活動のきっかけ コロナ禍がくれた
山内さんが活動を始めたきっかけは、昨年から続く新型コロナウイルスの感染拡大だった。「自分が2回生のときにコロナ禍になり、家にいる時間が増えた。そのタイミングで、一緒に住むおじいちゃんとおばあちゃんの農家について興味をもった」と、野菜との出会いを話す。山内さんが目にしたのは、色や形が悪く売り物にならない野菜たちが大量に廃棄される現状だった。
「この野菜たち、もったいない、と思ったときに『この野菜を使って何か面白いことができないか』と考えた。そこで思いついたのが、野菜を絵の具にしたり野菜で服に染色を施したりするということだった」と活動の原点を振り返る。
色や形が悪いが故に、それらの野菜たちに光が当たらないのは「人間と似たものを感じる」という。「人間も、なにか周りと違う人間に対しては関わらないように距離を置こうとしてしまう。野菜たちを、違う形で輝かせるという活動をしているなかで、自分自身の『へんてこりん』な部分や『完璧ではない』部分も愛してあげることの大切さを痛感している」と話す。
「野菜が捨てられる」という「当たり前」のように見えていたことに対して疑う気持ちを持つことができたのが今の活動につながっているという。「コロナ禍でまとまった時間が取れなければ考えられなかったことかもしれない」と感慨深げに振り返った。
活動を通して得られる新たな「学び」と「気づき」
「予想以上に多くの人たちに興味をもってもらえている。楽しい、面白いと感じるのは私たちだけじゃないということが分かったのがうれしい」と、山内さんは活動を通して得られる達成感を語った。
また、実際にオンラインでワークショップを開催するたびに学びや気づきがあるという。
「自分は野菜がもつ『色』に惹かれ、これを活かしたいと感じて活動を始めたが、色以外の点、たとえば匂いや形でも楽しんでもらえていることに気づけた。野菜が持つ魅力はたくさんあり、人にとってプラスになるのだと感じた」と笑顔を見せた。
得られる達成感の分、課題点も多い。
「コロナ禍でメンバー同士が直接会うことができない状況下で活動をするのが難しい。オンラインで会議もしているが、活動をするなかでお互いが共通認識をもちにくかったりコミュニケーションを取りにくかったりするときがある」と真剣な表情で語る。野菜を絵の具にするための機械が山内さんの家にあるために「どうしても私が行う活動量が多くなり、メンバー間で仕事量の差が出てしまう」と課題点を挙げた。
しかしコロナ禍だからこその利点もある。留学生や立命館アジア太平洋大の学生とも活動ができており、場所にとらわれないオンラインの形態が功を奏しているという。
「負けず嫌い」が自分をつき動かす
山内さんの活動の原動力になっているものは、自分自身の性格だ。
国際関係学部のグローバルスタディーズ専攻に所属する山内さんは、周りからの遅れを感じ、1、2回生のときに自信をなくしていた。「自己嫌悪に陥り、やめようかとさえ思った」とコロナ以前を振り返る。
しかしコロナ禍でまとまった時間ができたことで「自分にあるものは何か」と考えるようになった。そこでたどりついたのが「京都生まれ京都育ち」という自分自身が持つバックグラウンドだった。
「同じ専攻の学生たちの多くが留学経験や海外での生活経験をもつ。それに比べ自分は、長期間留学をしたことがない、半年以上外国に住んでいた期間もない純日本人だが、自分にはローカルなつながりならある。そこから京都でのつながりを強みにしたい気持ちが生まれた。確かに大学の勉強では遅れているかもしれないが、課外活動で自分に自信が持てると考えるようになった。『負けず嫌い』や『悔しさ』が自分のエンジンになっている」と語った。
「子どもたちに野菜の魅力を伝えたい」コロナ後に向けて膨らむ夢
現在はオンラインで絵の具を使ったワークショップを行っている。コロナの収束後は小学校に出向き、子どもたちに野菜の魅力を届けたいという。
「以前、大阪の小学校に向けてオンラインでワークショップをしたときに子どもたちの反応がとてもよかった。いい意味で忖度のない、まっすぐで純粋な感想を思い思いに伝えてくれたのがとてもうれしかった」と手応えを感じている。
山内さんは、子どもたちにとって「大学生」という存在との交流が大切だと考える。「子どもたちにとって大学生は『少し大きなお姉さんやお兄さん』。親でも、先生でもない存在である私たち大学生の目線からだからこそ伝えられることがあると思う。子どもたちとの交流をこれからも続けたい」と語った。
これからの展望
山内さんはこれからの活動の展望について「おやさい絵の具」と「おやさい染めTシャツ」の商品化を挙げた。
「今はまだ自分の周りにいる知り合いに使ってもらっている程度なので、もっと規模を大きくして全国に広めたい。絵の具については、文房具屋さんで買ってもらえるくらいになれるように頑張りたい」と意気込んだ。
「当たり前」を疑う大切さを知ってほしい
最後に山内さんは学生に向けてメッセージを送った。
「私の今の活動は、普段の生活のなかにある『当たり前』を疑ったところから始まった。コロナ禍で活動がしづらい状況ではあるが、まずは周りにある『当たり前』に対して疑問に思うところから始めてほしい。また、自分の活動が他の誰かにとってなにか新しいことを始めるきっかけとなってくれればうれしい」(坂口)
ラピスプライベートのホームページはこちらから。