「Everybody Has Talent」―今年度の立命館大学学園祭のテーマにはすべての参加者が自分らしく学園祭を楽しんでほしいという願いが込められている。しかし、その開催が危ぶまれている。春学期の卒業式や入学式などのイベントは中止され、例年学園祭に参加している多くの課外自主活動団体(サークルなど)も活動再開の目処は立っていない。
こうした状況の中、本紙は様々な視点から学園祭の在り方について特集する。
第3回は昨年度の学園祭に展示企画として出展した『立命館大学レゴ部』と『立命館大学飛行機研究会RAPT』、『立命館大学池坊いけばなサークル』に話を聞いた。
「学園祭は日々の活動の発表の場」レゴ部
昨年度、知育玩具であるレゴブロックを用いた建物や乗り物などの作品を展示したレゴ部は、学園祭に初出展ながらも多くの来場者が訪れた。普段は部員一人ひとりの得意分野にあわせた作品の個人制作のほか、複数人での共同制作、部内でのレゴブロックに関する知識の共有などが主な活動だ。
今年度は自宅での個人制作をしたり、ミーティングをオンラインで行ったりしているものの、共同制作や部員間でのパーツの交換、作品に対する直接のフィードバックはできず、さらには作品展示の場であるイベントが軒並み中止するなど、新型コロナウイルスの影響で例年通りの活動は行えていないのが現状だ。
レゴ部にとって学内での作品展示の場は新歓と学園祭のみ。新歓祭典が中止された今年、学園祭までもが中止されれば貴重な展示の機会を失うこととなる。
部長の渡辺篤司さん(文3)は「学園祭の開催判断は直前まで見極めた方が良い」としながらも、部の展示内容は昨年度からの見直しが迫られるという。
「学園祭では個人や共同制作の作品やレゴブロックに関する写真の展示のほか、来場者に車を制作してもらい、それをコースに走らせるという体験型の企画も行った。今年は体験型の企画は厳しいのではないか」と語る。
今年度は実施が難しい体験型企画だが、昨年度は非常に好評だったとのこと。制作体験はできなくても、展示作品の投票など、レゴ部と来場者が双方向で楽しめる企画を検討しているという。
しかし、レゴ部はコロナ禍で苦心するばかりではない。SNS上で部員が制作した作品を紹介したり、学外のレゴブロックファンに向けた講座をオンラインで行ったりなど、積極的な活動を欠かさない。
また、レゴ部は学園祭が実施されない場合は、独自のオンライン展示を行うことを予定している。個人制作の作品をホームページ上で公開するほかにも、スマートフォンを用いたAR(拡張現実)で作品を楽しむ企画も検討。オンラインのメリットを活かした新しい展示の方法を構想中だ。
渡辺さんはレゴ部にとって学園祭は「日々の活動の発表の場」という。「学園祭がどのような形態でも、できれば開催されてほしい」としながらも「開催されなくても大丈夫なようにオンラインでの企画の準備を進めている」と先を見据えている。
「学園祭は自分たちのことを知ってもらえる場所」RAPT
鳥人間コンテストの人力飛行機部門に毎年出場するなど、学外でも幅広く活動している飛行機研究会RAPT。しかし7月に開催予定であった同コンテストは、4月に中止が決定。作業室である部室にも入れない状況が続いたことで、例年のスケジュールはすべて後ろ倒しとなった。
ただRAPTは大学側から許可を受け、新型コロナウイルス対策を徹底した上で一部の対面活動を先日再開した。基本的にオンラインで活動する一方で、機体のテスト飛行などは対面での活動を予定している。また、現時点では来年の鳥人間コンテストに向け、設計やスケジュール組みといった準備をすでに始めている。しかし、新入生獲得を目的としたオンライン交流会や説明会は苦戦を強いられている。部員の岡本陸希さん(理工2)によると、わずか2~3人の参加に留まることもあり、今年度、RAPTに加入した1回生はまだいないという。
また学園祭は、RAPTにとって数少ない学内イベントとなっている。昨年はびわこ・くさつキャンパス(BKC)で人力飛行機の機体展示やコックピットの試乗体験を行った。実は昨年度の学園祭で展示されていたのは、2018年に中止となった鳥人間コンテストのために作成された機体。本物の機体に試乗できるとあって、当日は大きな反響を呼んだ。加えて小学生を対象にした紙飛行機の手作り講座も行うなど、幅広い世代に向けた企画を行った。岡本さんは「学園祭を通して、人力飛行機や鳥人間について多くの人に知ってもらえて嬉しかった」と振り返った。
今年度の学園祭については「対面で行われるのであれば、例年通り機体展示を行う予定」とした。また「人力飛行機を飛ばす」という団体の性質上「オンラインで代替企画を行うにしても、PVを流すくらいしかできないし難しいと思う」と語る。
岡本さんは学園祭について「RAPTの活動をみんなに知ってもらえる場所」だと話す。展示する機体の組み立てなどは負担を強いられるため、年間スケジュールが後ろ倒しとなっているなかで参加することに不安は残る。ただ、対面で活動を知ってもらう場所を残すべく、試行錯誤を続けている。
「学園祭を生け花について考えてもらう場に」池坊いけばなサークル
池坊いけばなサークルでは外部から講師を招き、月2回、衣笠キャンパスで活動している。2月いっぱいまでは対面で稽古を行っていたものの、その後は新型コロナウイルスの影響もあり、予定していた稽古は全て中止となった。また、稽古で使用する道具を大学構内で保管していることも影響し、オンライン上での活動もほとんど行えていないのが現状となっている。ただ、4月と6月にZoomを使用して行った説明会には、10人ほどの1回生が参加した。現時点で2~3人から、入会したいという旨のメールが届いているという。現在は9月の稽古再開を目指して準備を進めている。
昨年の学園祭で、池坊いけばなサークルは部員の作品展示だけでなく生け花の体験ブースを出展した。体験ブースでは部員のアドバイスのもと、来場者が生け花を楽しんだ。
また昨年は、例年作成している部員の個人作品に加え、数年ぶりに「大作」と呼ばれる大型作品を展示した。大作とは複数人が協力して作成する大がかりな作品のこと。大作のコンセプト(昨年度は「希望」)は、6~7月に部員間で話し合って決定。その後、講師と相談しながら展示形態などを細かく打ち合わせした上で、学園祭の前日に作品を作りはじめた。実際に大作を見た人からは「またやってほしい」などの声が届いたという。
また代表を務める髙田瑛介さん(産社3)によると、大作・個人作品のいずれも、昨年の夏休みにはテーマを考え始めたという。そのため今年度の学園祭は、対面で開催されるとしても「準備期間が例年より短いことを考えると、展示作品の規模は縮小せざるをえない」と語る。
また、サークル独自でオンライン展示会などは予定しているかという質問に対して「生け花はやはり直接見たり体験したりしてほしいので、現時点では考えていない。ただ、1回生とのオンライン交流会は考えている」とした。髙田さんは学園祭について「生け花に触れたことがない人でも触れてもらえる機会となっている。また、生け花について考えてもらう場になっているのではないか」とした。同時に今年度の学園祭については「立命館大学学園祭は規模が大きく、開催や中止の決断は大変難しいと思う。ただ、サークルとしてはどう動けば良いかが分からない」と不安をのぞかせる。また対面で開催される場合は、例年通り衣笠キャンパスでのみ展示を行う予定だ。
新型コロナウイルスの影響に伴い、ほぼすべての活動が完全に停止している池坊いけばなサークル。例年とは異なる動きのなか、活動再開に向けて大学との協議が進められている。
失われる触れ合い
出展する団体にとって学園祭はただの団体や作品紹介のためだけの場ではない。展示を通して来場者と双方向で楽しんだり、競技や芸術の分野に関心をもってもらったりする「触れ合い」の場である。その触れ合いが、コロナによって失われようとしている。