関西学生野球最終節、「立同戦」の第2戦目が21日に、わかさスタジアム(右京区)で行われ本学が同志社に8―6で勝利した。試合は序盤に同志社に先制されるも、辰己主将の内野安打で追いつき、中盤に勝ち越した。これで対戦成績は1勝1敗のイーブンとなり、22日の試合に決着が持ち越された。
試合を決定づけたのは「苦労人」の一打だった。1―1の同点で迎えた6回。辰己の内野安打を皮切りに犠飛と適時打で本学は2点を勝ち越す。2死1・2塁となお続くチャンスで7番安井(産4)が打席に立った。
「人生最後の打席になるかもしれない。悔いのないようにフルスイングをしよう」
次のイニングからの交代は決まっていた。4回生の安井にとって今季は最後のシーズンとなる。卒業後は商社への就職が決まっているが野球を続ける予定はない。
直前にマウンドに立った同志社の村居が投じた初球はアウトコースに外れる。
安井は立命館高校時代、1年秋から主力として活躍し15HRを放ったスラッガーだった。大学入学直後の練習で、当時のエースで現在は読売巨人軍に所属する桜井から本塁打を放ち、周囲の度肝を抜く。「ずっと安井が活躍するのを待っていた」と後藤監督が話すとおり将来を嘱望された選手だった。リーグ戦デビューは2回生の秋季リーグ京大戦。しかしその後は代打などの出場がメインでレギュラーに定着しきれない。
レギュラー奪取を目指した4回生の春季リーグ開幕直前に左手有鈎骨(ゆうこうこつ)を骨折する。
「ああ終わったな」
4回生の多くが就活でチームを離れる中、安井も引退しようと思った。そんな折、コーチから「チームを支えてくれないか」と打診された。それからはバッティングピッチャーなどチームのために裏方にまわった。
「いつ辞めようかと最初は思っていたけれど、チームのために続けてきた」
春季リーグ閉幕後の紅白戦で「チームのために頑張ってきたから」と打席を与えられた。ケガでバットはほとんど振れずに実戦から遠のいていたが、その打席で本塁打を放った。
チャンスを掴んでメンバー入りした6月の全国大会では1回戦の奈良学園大戦では適時打を放ち勝利に貢献した。そして迎えた今季は初戦の京大戦から1塁手で出場していた。しかし目標の本塁打はまだ打てていなかった。
村居が投じた2球目を「どんな球を打ったのかも分からない」くらいに強振した。放物線を描いた打球は左翼席の芝生で跳ねた。一塁に到達する直前に右手を振り上げた。
「たくさんのお客様が見に来てくれて、その中でグラウンド1周回れるのはこれ以上ない喜びだった」
ベンチに帰ってからは仲間から手荒い祝福を受けた。その目にはうっすらと涙が浮かんでいた。