神経伝達物質であるドーパミン(ドパミン)中毒のガキ(子ども)、略してドパガキ。

「TikTok」の動画。画面をスクロールすると次の動画が表示される。ショート動画などの手軽に刺激を得られるコンテンツを求め続ける若年層を指す若者言葉として、日常的な用語となっている。こうしたスマートフォン(スマホ)利用に対する事象は、新しい造語の普及に留まるものではない。

令和7年度のこども家庭庁による調査では、インターネットを利用していると回答した青少年(満10歳から満17歳)の平均利用時間は、前年度から約25分増の約5時間27分。

2024年に発表した中国・揚州大学の研究者らが行ったメタ分析では、問題のあるスマートフォン使用(PSU)=①=の推定有病率は世界全体で37・1%とされる。人々のスマホ利用について、2人の教授に話を聞き、現在のスマホ社会について考える。

①問題のあるスマートフォン使用(PSU) 正式名称はProblematic Smartphone Use。スマホの使用がコントロールできず、生活や心身に悪影響を及ぼしている状態を指す。国際的な診断基準のDSMとICDではスマートフォン依存症の診断名はなく、医学や心理学、公衆衛生学などで使われる。

「ドパガキ」が熱中するコンテンツとして代表的なものが、YouTube(ユーチューブ)やTikTok(ティックトック)などで視聴できるショート動画だ。総務省情報通信政策研究所が6月に発表した「令和7年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」では、ティックトックの利用率は前年度から3・5ポイント増の36・7%で、10代は最も高い67・9%、続く20代は61・5%に上った。

ショート動画が人を引き付ける理由として、本学大学院先端総合学術研究科の美馬達哉教授は「アテンションエコノミー」を挙げる。人の注意を収益化する市場の中で、動画を作る側は予算をかけて動画を作り、再生回数を伸ばすことのできる動画制作者が生き残る。「その道のプロが何十人もかけて作っているわけですから、個人が節制しようと努力しても、動画の魅力には勝てないです。自己責任とは考えず、社会全体での規制やルール作りをした方がいいでしょうね」と話す。

みま・たつや 専門は生命倫理学・神経科学など。脳神経内科医師。

総合心理学部の首藤祐介教授は、ショート動画の仕組みを「ハトのオペラント条件づけの実験」になぞらえる。ボタンをつつくと餌が出てくる箱(スキナー箱)で訓練を積んだハトは、何百回つついて1個の餌が出る確率になっても、「次に出るかもしれない」という期待でボタンをつつき続ける。ヒトにも同じメカニズムが働いているという。首藤教授はショート動画の特徴として「面白い動画が偶発的に流れること」を説明。ショート動画の構造が半永久的であることも踏まえ「これぐらいスクロールすればまた面白い動画に出会えるだろうというので、どんどん見るようになってしまうのでは」と見解を述べた。

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世界各国ではスマホの利用を規制する動きが進んでいる。25年12月、オーストラリアでは世界初となる16歳未満のSNS(交流サイト)利用を禁止する法律を施行した。ネットいじめや性被害だけでなく、スマホの依存から子どものメンタルヘルスを守るためだとされる。

「スマホの使い過ぎが不幸だとは限らない」
首藤教授の研究によれば、PSUは嫌なことに対する回避傾向の程度によって、ウェルビーイング(心身が健康で幸福な状態)に与える正負の影響が左右されるという。「嫌なことを避けるためにスマホに没頭している人は使えば使うほどウェルビーイングは低いが、逆にそうした回避傾向が低い人はスマホを使った方がウェルビーイングが高い。(回避傾向が高くなければ、)基本的にはスマホを使った方が便利でいい生活ができるんですよ」と説明する。

現状のショート動画の体制については、SNS事業者に区切りをつけてもらうシステムを提言。個人でのスマホとの向き合い方については「単純に使わなくするというのは分かりやすい解決法ではあるが、幸福でなくなる可能性もある。スマホを使っていることというよりは、そこで悪い結果が生じていることの方が問題。そこから生じてくる害をどう減らしていくかということを考えないと、現代社会では幸せになれないと思います」と助言した。

しゅうどう・ゆうすけ 専門は臨床心理学、認知行動療法など。臨床心理士としての経験も持つ。

(松山)