11月1日、立命館総長選挙を前に、学生主導の候補者公開質問会「ReQuestion 2018」を、学友会中央常任委員会、立命館大学放送局(RBC)、CUESと本紙の4者共同で開催した。
総長の候補者として選出されていた、仲谷善雄候補、松原豊彦候補、吉田美喜夫候補の3名を招聘し、主催者質問2問に加え、10月17~24日にWEBで学生に対して募集を行った質問のうち、3問を問いかけた。
主催者質問の1問目「今回の総長選挙の『論点』は何だと思うか」という問いに対し、仲谷候補は「論点はまず『この学園の未来がどこへ向かうのか』だ。具体的な政策についてはR2020、R2030の中で議論していくが、どういった思いで施策に取り組むかが大切。私の思いは、この学園を世界が語る学園にしたいということである。2つ目は『チャレンジできるかどうか』だ。学園全体のチャレンジも大切だが、学園を引っ張っていくリーダーとしての総長がチャレンジできるかどうかが問われていると思う。皆さんと一緒にやっていきたい」と述べた。
松原候補は「4年間の学園の到達点を議論し、次の4年に向けての課題をみんなで語り合うことが総長選挙の意味だ。所信表明でも述べたが、山積する諸課題に皆で取り組むためには、吉田総長の再選が望ましい。推薦委員会から推薦していただき光栄だが、それが私の立場である。論点としては、どのような教学を行っていくか、教育研究を支えるキャンパス環境をどう整備するか、学費と財政の政策の3点が大切だ」と話した。
吉田候補は「総長選挙自体が政策論争をする場ではないが、政策としてはR2020、R2030を全学で議論して決めていく。その先頭に立つのが総長である。それを前提として、学生が卒業して社会で活躍できる力をどうつけるかが、最も大切なことである。教学条件を良くしていくことが最大の課題であり論点である」と語った。
主催者質問2問目は「次期総長に求められる資質は何か」というものであった。松原候補は「なにより総長個人として学者としての魅力、内外からの信頼が大切。そして必要なときには迅速に判断して決断できるリーダーシップを持っているかどうかだろう」と答弁した。吉田候補は「私は4年間総長をやってきたので、資質は実証されていると思う。その上で、総長に必要なのは、健康、学生のことを大事に考える心持ち、謙虚な姿勢、どんな困難からも逃げないこと、この4つだと考えている」とした。仲谷候補は「様々な資質が求められるのが総長であると思うが、1番が責任を持った決断力である。リーダーの資質にはパフォーマンスを示す決断力などのP機能と、人の意見を聞いて取りまとめるM機能がある。自分はもともとM機能の人間だが、企業での22年の経験や、学園での学科長、研究機構長、学部長のそれぞれのステップにおいてP機能を獲得してきた。総長の役割を果たしていけると思っている」と語った。
続いて学生からの質問を問いかけた。1問目「立命館大学の現状についてどのように考えているか」(情理3)という質問に対し、吉田候補は「立命館大学には15の学部・3つのキャンパス・3万6000人の学生がいる日本有数の大学になった。ほとんどの学問分野をカバーして教育・研究している。これは誇りに思っている。一方で少子化、グローバル化、情報化などに応えていかなければならない。15ある学部の総合性を上げることも重要。立命館が将来誇れるような大学になるために、教育・研究の質を上げ、社会から付託された大学としての責任を果たすことが重要だ」と語った。仲谷候補は「本学はSGU(Super Global University)にも選ばれ、研究でも私学で3位の研究補助金を頂いている。一方で課題は、そういう活動に学生が参加しているか、学生の知的生産の場になっているかが問題だ。1つできることは、最先端の研究の成果を反映させ、ワクワクさせる環境を作っていく。例えば情報理工の研究技術を使って、南草津をサイバータウンにする。そういった研究の成果や学生のアイデアを街やキャンパスで実現できれば、知的生産の場になると思う」と話した。松原候補は「学部の充実により、私のいる食マネジメント学部など、新しい分野へ果敢なチャレンジを行ってきた。これから必要なのは、やはり教育の質の向上だ。ラーニングイノベーション、特に初年次教育や海外経験、地域での学びなどを充実させていきたい。もう1つはグローバル化。国際学生を増やすこともそうだが、学生を海外へ送り出すことも重要。そして課外自主活動も大事。この支援も行っていきたい」とした。
学生質問の2問目「今後、立命館大学はどのように進むべきだと考えるか」(生命2)に対し、仲谷候補は「私はこの学園を世界が語る学園にしたい。そのために1つできることは、国連が定めた持続可能な開発目標『SDGs』に取り組むことだ。今も教育・研究のレベルではかなり進んでいる。学生もSusteinable Weekなどで取り組みを行っている。SDGsの取り組みを通じて世界共通の課題にとりくむことで『意識の国際化』につながる。このようにして『世界が語る学園』が実現できると考える」と述べた。松原候補は「立命館大学は大きな大学に発展した。これからの時代は、量的な拡大ではなく、教育・研究の質の高さ、教育内容の深さを突き詰めていくべき。学部研究科同士の横の連携、付属校と大学の縦の連携をより強化したい。グローバル化に加え、地域連携も行い、ローカルな価値も深めていきたい」と語った。吉田候補は「私は現在総長であるが、次期も総長となれば、2010年代から2020年代をつなぐ時代を担うことになる。未来の予測が難しい時代だが、チャレンジが可能になる。『立命』の名は、『孟子』の『尽心章句』に由来し、立命館は「学問を通じて、自らの人生を切り拓く修養の場」を意味する。大学も、未来を拓いていく。2006年に制定した『立命館憲章』を大切にし、『未来を信じ、未来に生きる』の精神をもって、確かな学力の上に、豊かな個性を花開かせ、正義と倫理をもった地球市民として活躍できる人間の育成に努めたい」と述べた。
最後の学生質問は「多様化する今の学生が、大学に対して求めるものは何だと思うか」(文3)であった。松原候補は「難しい質問。1つ目は、大学は教育の場であることから、よい教育をすること。2つ目は、やりたいことを伸ばすこと。多様なキャンパスなど、立命館の様々なリソースを生かして、それを行いたい。3つ目は、キャンパスインフラの整備。食環境の整備や交通の便など課題である。4つ目は多様性を伸ばすこと。学び合い、成長し合うしくみをつくっていきたい」と答弁した。吉田候補は「多様性の中身に対して、今日理解が深まってきている、性別、宗教、言語だけでなくセクシュアリティも含めて、ダイバーシティを尊重してほしい、というのが求める共通項だと思う。これまでは、学生という集団として捉えていた面もあったと思う。1人1人の学生を大事にしていくこと、これを進めていかなければならない。学生が成長したいという願いに応えていく、そういうものができる学園を目指していきたい」と述べた。仲谷候補は「一番求めているのは、成長したいという願いだと思う。ワクワクする環境であれば、自然と成長できると思う。先のサイバータウンの例などもそうだが、良い刺激を受けることができる、ダイバーシティにあふれた豊かな環境を提供したい。2つ目は、卒業してからも支えてほしいというニーズがあると思う。社会人のキャリアの中でも、大学に相談できる仕組み、新しい技術を学べる仕組み、そういうものも整備したい。3つ目は、生涯誇れる大学にあってほしいということ。これをリードするのは総長の役目であると思う」と語った。 (吉武)