衣笠キャンパスの以学館で1日、国際連合の軍縮部門トップを務める中満泉事務次長(軍縮担当上級代表)を招いた講演会が開かれた。中満氏は「平和で公正な未来へ 私たちにできること」をテーマに、若者が果たしていく役割について語り、参加者約400人が耳を傾けていた。
講演会は、国際平和ミュージアムのリニューアルと、本学園の創立125周年を記念したもの。中満氏への名誉博士号贈呈の後、行われた。
講演会に先立って取材に応じた、同ミュージアムの君島東彦館長は「国連の軍縮部門トップの考えを直接聞ける機会は貴重だ。若い世代への(中満氏の)メッセージを受け止めてほしい」と期待を話していた。
また講演会当日、あいさつに登壇した君島館長は、平和構築に一貫して取り組んできた中満氏の活動について「(平和創造の拠点である)国際平和ミュージアムにとって大きな指針となる」とした上で「若い世代に大きな示唆を与えてくれると確信した」とあいさつした。
講演で中満氏は、ロシアによるウクライナ侵略や、イスラエルとイスラム主義組織ハマスの戦闘などが続いている現状について「歴史上の岐路に立っている」と指摘。「人類が一丸となって、紛争よりも平和を、分断よりも協力を、恐怖よりも希望を選択していかなければならない」と訴える。
「紛争が壊滅的な影響を与える一方、一人一人の行動が集まることで大きな変化をもたらすことを目撃してきた」といい「私たちが協力できれば、(国連憲章に記されている)『戦争の惨害から将来の世代を救う』ことができると信じている」と語った。
日本原水爆被害者団体協議会(被団協)にノーベル平和賞が授与されることが決まったことにも触れ、「国際社会が(核兵器の)リスクに直面する中、絶対に使用してはならない兵器だと世界に大きく発信された。軍拡から軍縮に軌道修正していく契機にしなければならない」と述べた。
中満氏は「歴史の転換点には、若者の大きな貢献があった」と振り返る。若者が変化の原動力になるためには、科学を平和のために使う方法を考えること▽正しいことを考えて勇気を持って行動すること▽自らの関心を超えて他の人とつながり協力すること―などが必要だと助言している。
「身の回りにあるさまざまな不正義の解決に取り組むことが、平和貢献の重要な部分を占めている」とした上で、「皆さんは平和な世界をつくっていく力と可能性を持っている。一人一人が協力しながら、平和で公正な未来をつくってほしい」と呼び掛け、講演を締めくくった。
中満氏は講演後、学生からの質疑に応じた。自らと異なる価値観の生かし方を問われると「人間は異なる点より共通点の方が多い。どのように共通基盤をつくれるか探していくことが重要。平和の議論は、共通基盤をつくる作業だ」と説明していた。
(小林)