11月6日、ホテルオークラ京都にて、小説『おいしいごはんが食べられますように』で第167回芥川賞を受賞した小説家の高瀬隼子さんによる記念講演が行われた。本作品では、主人公の男性「二谷」を中心に、食を通した人間関係が描かれている。高瀬さんは2011年に本学文学部哲学専攻を卒業している。本紙のインタビューでは、芥川賞受賞の背景や、自身の学生生活を振り返った上での本学学生へのメッセージを聞いた。
○芥川賞を受賞した瞬間の心境についてお聞かせください。
受賞した当日は実感がありませんでした。もちろん「芥川賞を受賞した」という事実を疑っているわけではありません。でも、どこか他人事のような感覚でした。
○『おいしいごはんが食べられますように』の着想は、どこから得たのでしょうか。
着想はいつもありません。もともとご飯の話を書くつもりはなく、男性が主人公の作品を書こうと考えていました。最初に主人公が生まれ、書いているうちにいろいろなキャラクターが現われ、物語が動いていくうちにご飯の話になりました。そこから、ご飯に関する物語である本作品を書こうという流れになりました。
○本作品を通して、伝えたいことやメッセージなどがあれば教えてください。
私自身が小説の読者であるとき、作者が何を伝えたいかは重視していません。小説は、作者の手を離れた時から、読んでくださった方のものだと考えています。この考えは、学生時代に立命館大学の文芸サークルで教えてもらったものだと感じています。むしろ、読んでみて、どう感じたかを教えてほしいです。
○作品を創作する上で、苦労したところはありますか。
書くことが好きで続けているため、書くこと自体に苦労はありません。しかし、編集者と定めた締め切りがあるので、それまでに完成しなければ関係者に迷惑をかけてしまう。そういった点で「書けなかったらどうしよう」という焦りのような気持ちを抱きながら書くことは大変でした。
○立命館の学生の中には、高瀬さんのように小説家を目指す人もいると思います。しかし、書き続けることはとても難しいことだとも感じます。そのような学生に対するアドバイスはありますか?
どうしたらいいか……難しいですよね。
書き続ける人って、書こうと思って書いているのではなく、勝手に書いちゃってると思うんですよね。だからといって、書けない時期は誰しもあります。3年間書けないときもある。でも、また「書きたい!」と思うこともあるので、長い人生でみると半年とか2、3年で焦らなくていいと思います。
○立命館大学の在校生に向けて、自身の学生生活を振り返ったうえでのメッセージがあればお聞きしたいです。
私の受賞を喜んでくれている学生さんがいるなら、本当にありがたいと思います。社会人になっても本を読む事はできますが、今しか読めない本がたくさんあるので、学生の皆さんにはぜひ本をたくさん読んでほしいです。(竹内)