衣笠キャンパス以学館1階や有心館各階、やびわこ・くさつキャンパスのプリズムハウス2階で、トイレの整備・改修が進められている。
本学では使用年数が経過したトイレを、キャンパス利用者の快適性向上の観点から改修してきた。本学財務部の米川義人さんはトイレ様式の変化をその例にあげ「和式トイレを使いたくない学生が増え、洋式トイレへの転換が進められてきた。だが、同じ数を確保するとなると和式トイレよりも面積を要する」と空間の制限と数の担保の両輪の維持に頭を悩ませたことを振り返る。米川さんは、トイレの様式の転換を含むキャンパス内でのトイレの改修・整備を進めていく中で、社会からの要請に変化を感じるようになったという。その一つに性の多様性をあげた。
「数年ほど前から工事業者さんやメーカーからの提案を受ける中で、自分たちの意識にも変化が生まれた。それらが少しずつではあるが実現してきている」と話す。その実例として視覚的に確認できる利用者マークがある。多機能・多目的トイレで見られるこのマークは、従来の性別による色分けを廃止し黒色に統一した。
しかし米川さんと本学総務課のダイバーシティ&インクルージョン推進室の東津真紀子さんはこれらの変化をジェンダーレスの一面的な視点で捉えることに注意を促す。東津さんは「ジェンダーレスを推進するためではなく、すべての利用者が安心して使えるトイレを目指したもの」とする。洋式への転換やバリアフリー化、環境への配慮や防犯対策など、実際にトイレで確認できるこれらの変化には「だれでも安心して利用できる」という改修事業が持つ本質的な目的がある。
また、設備の充実だけが「多くの人が快適に過ごせるキャンパス」を実現するわけではないという。この点について東津さんは、提供される技術・整備面の充実だけで解決できるという見方に疑問を呈する。「技術や整備ですべての課題を解決することはできない。困っている人、手が必要な人に声をかけられるマインドや知識こそ求められていると思う」と個々人の意識の変化の重要性を語る。
今後のトイレ改修を含むキャンパスづくりの展望について米川さんは「DXをはじめとした様々な技術が発達したとしても学生・児童・教職員がキャンパスに来なくなることはない。逆に、今までキャンパスにお越し頂けなかった方々が来校されることも想定される。トイレ整備に限らずキャンパス施設に求められる機能は今まで以上に多岐にわたっていく。常にさまざまな情報にアンテナを向け、時代に求められるキャンパスを構築する必要がある」と話した。
(奥野、鈴木麗)