「大阪府北部地震は想定されていなかった地震だ。現在、南海トラフ巨大地震に注目が集まっているが、茨木市では有馬―高槻断層帯や上町断層帯の方が被害が大きいと想定される。身近で地震が発生する可能性もある」と本学政策科学部の豊田祐輔教授は警鐘を鳴らす。(聞き手・松山)

■地域イベント契機に

地域の防災訓練に参加しない住民には地域のつながりが薄く、情報が回ってこない場合や知り合いがいないことで参加しづらいと感じている場合も少なくない。

2015年からOICで開催されてきた「いばらき×立命館DAY」に、ゼミで防災ブースを出し続けてきてきた。

2018年に防災ブースに参加した子どもの保護者を対象にアンケートを行ったところ、防災訓練に「参加したことがない」「ほとんど参加していない」と答えた約半数が「防災訓練に参加したい」と感じていた。「いばらき×立命館DAY」のような地域イベントではこういった人たちも気軽に参加できる。こうした地域イベントが防災活動へのきっかけになるはずだ。

■観光客も考慮に

2020年の新型コロナウイルス禍、訪日観光客の地震防災意識調査として、2015年以降に観光目的で訪問した外国人観光客を対象に、ウェブ調査を実施した。地震発生時の正しい行動に関する回答として▽ガラスや看板などの落下物を避ける▽ブロック塀に近づく▽電柱にしがみつく▽自動販売機にしがみつく――といった選択肢を用意したところ、「ブロック塀に近づく」と答えた外国人が36・5%と最も多かった。大阪府北部地震でもブロック塀が倒壊する事件があったように、日本人にとってブロック塀は基本的に危ない存在としてある程度、共通の認識となっている。「日本で常識と思われているものが通じない可能性がある」というのは防災を進める上で考慮に入れる必要がある。

国内観光客に対しては一斉帰宅による交通の大渋滞、さらなる混乱を防ぐための効果的な対策が必要だ。姫路城における大地震を想定した国内観光客の意識調査では、滞在可能施設提供の有無で滞在率が約20%変化したのに対し、水・食料の提供の有無では約40%の変化と、2倍の差がみられた。

おそらく観光客というのはすぐ帰れるだろうと想定し、水・食料の提供があればとりあえず滞在しようと考えているのではないか。

■十分な意思疎通を

2011年、タイでは大規模な洪水が発生し、アユタヤ遺跡のあるアユタヤ島も甚大な被害を受けた。アユタヤ市は土の堤防を設置していたが、商店主らが商売に支障をきたすことを理由に、堤防を破壊した。最終的には築造に同意したものの、洪水発生時には新しい堤防が固まっていなかった。

こうした住民間、住民と行政間での「リスク・コミュニケーション不足」による事例は日本にもある。2019年の台風19号で、多摩川が氾濫。一部地域では堤防が整備されてこず、マンションの浸水被害が発生した。背景には、「景観を大切にしたい」といった意見により議論が続いていたことがあった。

堤防が築かれなかったことが良い悪いというわけではないが、日本でもこういった事例はある。きちんと話さないとこうした事例が起こるということだ。

■自身が起点となって

現代社会は情報であふれている。ある程度信頼できる情報を調べて、自分がどうしたらいいかというのを考えて行動するというのが大事だ。また、自宅生は家族が防災対策を行っていることもあり、一般的に下宿生の方が対策をしていない。自分が起点となって周りの人たちの行動を変えるようにしてほしい。地域の防災訓練については、本来は気軽に参加できるものなので、ぜひ参加してもらったらと思う。


◆とよだ・ゆうすけ 専門は防災まちづくり、観光防災など。立命館大学歴史都市防災研究所で副所長を務める。茨木市総合計画審議会委員としての経験も持つ。