産業社会学部の斎藤真緒教授(家族社会学)らは4月、家族の世話や介護などを担う「ヤングケアラー」への支援課題をまとめた書籍を出版した。7月7日には平井嘉一郎記念図書館で出版記念イベントが開かれ、斎藤教授は「大学と行政が連携して、社会資源を使いながらサポートすることが大事だ」と話した。

ヤングケアラーを取り巻く課題について話す斎藤教授=7月7日、衣笠キャンパス

書籍は「子ども・若者ケアラーの社会学 ケアリング・ソサエティの創造」(クリエイツかもがわ、税込み2750円)。本学人間科学研究所「子ども・若者ケアラーの声を届けようプロジェクト」(YCARP)の研究チームが中心となって執筆した。

子ども・若者育成支援推進法が改正され、ヤングケアラーが行政の支援対象として位置づけられた2024年以降、拡充が続くケアラーの支援について、あり方や課題を論じている。

イベントには斎藤教授のほか、共著者の▽衣笠総合研究機構・河西優研究員▽非常勤職員・武石卓也さん▽公益財団法人「京都市ユースサービス協会」・竹田明子さん▽産業社会学部・松田亮三教授(比較医療政策)――が登壇し、支援につながれない当事者の実態について、行政の担当職員を交えて議論した。

中高生の居場所づくりに取り組む武石さんは「相談しないという生徒の選択には理由がある。相談に乗らなければ、と焦らずに相談しやすい場を整えないと、どれだけ相談先を作っても来ないだろう」と指摘。

若者ケアラーの相談に応じている竹田さんは「公的な相談窓口に出向いたらどんな支援を受けられるのかを伝えなければ相談支援は機能しない」と話した。

若者との関わりについて実話を紹介する武石さん(右)=7月7日、衣笠キャンパス

松田教授は、相談などのサービスを受ける権利があることを認識していない当事者がいるとして、周囲が支援につなげる重要性を訴えた。

京都市職員の小野等さんは、ケアをしている相手についてではなくケアラー自身の相談窓口を新たに設置予定だと話した。どこに相談したらいいか分からないという声や、自身を相談対象だと思っていないケアラーに向けたものだという。

「大学の場で市の取り組みを紹介するなど、大学と共にケアラー支援を推進していくことは大事なことだと認識している。関連団体の取り組みと連携しながら、ケアラー支援をより良いものにしていきたい」と語った。

イベントには、本学の学生や教職員をはじめ、関係機関で働く人など、約30人が参加した。

イベントでは7人が登壇し、支援の現状と課題を報告した=7月7日、衣笠キャンパス

(井本)

【用語解説】
「子ども・若者ケアラー」とは
一般的に大人が担うと想定される家事や家族の世話を日常的に行う子ども・若者のこと。長期に及ぶケアは、子ども・若者の現時点の生活だけではなく、将来の人生設計全体に計り知れない影響を及ぼすことから、切れ目ない、長期的かつ一貫した支援が必要だという連続性を示す。YCARPでは「子ども・若者ケアラー」が採用されている。