本学は2021年度春学期のキャンパス利用に際して抗ウイルス・抗菌コーティング、接触状況把握システムの導入、ドアノブの改修の3つの感染防止対策を実施した。
抗ウイルス・抗菌コーティング
今回、抗ウイルス・抗菌コーティングが施工されたのは本学の全教室の机・椅子、食堂、図書館、体育館、トイレなど利用頻度の高い主要な施設・設備。その効果について、ニチリンケミカル株式会社の管理部統括広報・庶務課の中里陽子さんは、JISや国際標準ISOで定められている試験方法によって、大幅に菌・ウイルスを低減させる結果が得られているとする。
具体的な試験方法としては、抗ウイルス・抗菌コーティングに用いるセルフィールを「施工している布」と「施工していない布」の2種類用意。双方の布に同じ菌種を同じ数だけ接種し、菌の育ちやすい環境下において48時間培養した後、菌数を計測する。セルフィールを施工していない布は、菌数が約2000倍に増殖したが、セルフィールを施工している布は、菌数が1万分の1以下に減ったという。
またウイルスについては、2.0以上あれば抗ウイルス力があるといわれる活性値で、3.2以上の良好な試験結果を得ているという。活性値とは一定時間経過後のウイルスの概数の減少を表現した値である。なお、試験が実施されたウイルスは、インフルエンザウイルス(H3N2)、ネコカリシウイルス(ノロウイルス代替)。
抗菌コーティングに用いられたセルフィールには、カリウム40(40K)、鉄(Fe)、チタン(Ti)が含まれる。特にカリウム40は空気中の水分子に働きかけ、ヒドロキシルラジカル(‐OH)と過酸化水素を生成する。また、FeとTiは空気中の酸素を原料とする反応により、スーパーオキシドイオン(O2‐)を生成する。これらのヒドロキシルラジカルとスーパーオキシドイオンの2つのラジカルがウイルスや細菌に作用するという。
具体的なウイルスへの作用は、タンパク質で構成されるエンベロープというウイルスの膜を破り、感染力をなくすことである。また、もともとエンベロープを持たないウイルスに対しても、ウイルスの構成成分を酸化分解することで感染力を発揮できないようにする。よってエンベロープを持つウイルスと持たないウイルス両方への効果が考えられるという。また、新型コロナウイルスに対してどれほど効果があるかは安定した検体が入手困難であるため検証段階だという。中里さんは「コロナウイルスがエンベロープを持つものであると言われていることから、試験を行っていない他のウイルスと同様に有効であることを期待している」としている。
本抗ウイルス・抗菌コーティングは完全無機剤、アルコール不使用であり、人体には無害。アレルギーや過敏症の人も安心して使用できるという。また、病院、鉄道などの公共施設でも採用されている。本学ではさまざまな背景を持った学生が多く過ごすということを踏まえた感染症対策であったという。
今回の抗ウイルス・抗菌コーティングの導入について本学財務部契約課の久米達也さんは「コロナの恐怖が少しでも和らぎ安心してキャンパスで学び・学び合える環境のために抗ウイルス・抗菌コーティングの施工を実施したが、マスク着用など一人ひとりの感染防止対策も徹底し、キャンパスに来る全員で安心・安全なキャンパスを実現したい」とした。
接触状況把握システムの導入
本学は春学期授業開始に伴い、学内の5万席にQRコードを貼付した。着席した際、机に貼付されたQRコードを読み取り、システムにRAINBOW IDとパスワードを入力し登録すると、陽性者と接触した可能性がある場合、大学から学内メールにて通知を受けることができる。また本システムは「学園関係者に新型コロナウイルス感染者が発生した場合の対応ガイドライン(第2版)(2020年10月5日改訂)」などに基づき陽性となった人や、その可能性の高い人への聞き取りの際に、本人の過去の行動状況の裏付けとなるような側面もあるという。なおどちらの場合でも、個人が特定されるような状況とならないように十分留意するとしている。
本システムに対して、学内では新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)があるにもかかわらず、なぜ実施をするのかという声もあったという。しかし本学総務部総務課の木村友紀さんは「学内で安全・安心を守るという観点から不用意に色々な情報を取得するのではなく、皆さんの読み込みによって限定した情報を取得する形が望ましいと考えている」とした。
また春学期開講後、4月19日までにシステムに平均して1日に1500回ほどの登録があり、これはキャンパスの出入りした学生のうちの10%弱と推算されるという。この数値について、木村さんは「皆さんが協力してくださっていると感じているが、理想としてはまだまだというところ」とコメントした。
システムの利用について木村さんは「1日のうちに何度も登録は可能なので、座席や教室の移動があれば、随時登録してもらいたい。そのようにしていただけていれば、このシステムや本学の取り組みが、一層効果的なものになると考えている」と学生に呼びかけた。(川村・松尾)
〇関連HP
・より専門的な「空気触媒セルフィール」についてはこちら