新型コロナウイルス感染拡大により2020年度から本学の授業形態についてはさまざまな議論が行われてきた。コロナ禍3年目となる2022年度の授業形態について本学教学部の中本大部長、仲田晋副部長、長谷川哲次長に話を聞いた。
Web授業の実施について
Web授業について、文科省から出された「大学設置基準第32条第5項等の規定」で遠隔授業の取得単位として認められる単位は60単位が上限とされている。一方で「大学等における遠隔授業の取扱いについて」では全授業回の半数を超えない、メディアを高度に利用した授業実施は対面授業としてみなされるという通達がなされている。これを踏まえ、中本部長は「ここで示された問題意識を共有し、教員の方に授業設計をしてもらいたいと考えている」とする。一方で中本部長は、ここでWeb授業として認められるのは、同時配信型とVOD型の授業であり、その両方で学生との双方向性を担保することが定められているとし「緊急避難的に実施していた資料レジュメだけをアップする授業は来年度からは一切ないと言ってもよい」と述べた。
加えて、今後のWeb授業の活用におけるキャンパスでの学びと「大学に来ることができるのに来ない学生」について、中本部長は「オンラインでも学びが続けられれば良いとは思っていない。正課・正課外の関わりを含めて大学であると考えている。教学部としても、学生がキャンパスに来て学生同士の学びの多様性を感じてもらえるような状況を作れるよう努める」とする。
また、仲田副部長は次年度の授業について「基本対面の授業を重視しつつ、これまでの経験や学内のネットワーク環境の状況を生かし、対面授業でもWeb授業の良いところを取り入れることもできる」とした。また、中本部長は「上手くWeb授業を取り入れることができれば、授業内で世界中の人とつながることも可能。新しい機器等も開発されれば、ある種『ユニバーサルな学び』が作られていくと考えている」と期待を寄せる。一方で、情報機器を含めたシステムの活用については説明会等を実施しているが、まだ教員や学部によって活用に差があるとする。これを含めたWeb授業の課題について仲田副部長は「今後も問題意識として持ち続けていきたい」とした。なお、ハイブリットの授業形態における学生の満足度を向上させるために、ハイブリットでの授業実施例などの良い取り組みを周知しているという。また、2022年度の授業形態に関する判断について中本部長は「少なくとも、オリエンテーションの準備も含めて3月の初旬には、一定の判断をしなければいけない。一方で、第5波の急激な感染者数の下がり方を踏まえて、機敏な判断が必要であると考える」とした。
2022年度授業形態について
授業形態について仲田副部長は、これまでアンケートを通して、教育学習支援センターは学生の状況を理解するために丁寧に分析を行ってきたとする。特に2021年度の春学期の授業アンケートをもとにした現状の分析からは、3つの点が指摘されている。まず1つ目の「授業の質が重要であること」について、仲田副部長は大学教育の根本的な部分であるとした。なお、授業の質については質問の応答・フィードバックが重要であると考えているとする。2つ目の「授業形態は『学習充実感』と『授業外学習』に大きな影響を及ぼさないこと」については「驚きであるとともに、統計的な分析の中でこのような結果が見えてきたことは重要であると捉えている」とした。3つ目の「授業外学習時間が長いと学習充実感が高い傾向があること」を、適切な量の課題を課すことで、授業外の学習を促すことが学生の能動性を高め、学習の充実感につながると受け止めているとした。この結果はすでに教学委員会に伝えているという。特に講義系の科目・外国語科目・小集団系科目の状況を分けて集計しているため、各教員が授業運営の参考にできるような形で伝えているとした。
BCP改訂による授業形態について
昨年12月15日の新型コロナウイルス感染症に対する本学の行動指針(BCP)の改訂による授業形態について、大きな変更はないとしながら、レベル1・2の授業形態が完全に同じものになった点に中本部長は言及した。教室の換気の状況が整ったこと、学生の感染も増加しているが、授業におけるクラスターは一切発生していないことを踏まえ、2以下であれば通常の授業形態での実施が可能だと判断されたという。なお、BCPは法人全体の活動を継続させるための方針であるが、大学での具体的な運用も可能な限り含まれるよう要望したという。
新入生へのサポートについて
長谷川次長は「高校でもWeb授業が実施されており、2022年度新入生もWeb授業に慣れている人が多いと考えられるが、高校とは違う環境でWeb授業を受講する学生や、大学で導入されているPanoptoやmanaba+Rなどの使用に関するサポートを行っていく」としている。例えば授業をサポートしてくれるES・TAの方には、これまでも教室機器類や授業ツールの操作説明を行ってきたが、その録画を公開することで、ES・TAがいつでも参照できるようにしているという。なお、昨年度に引き続き、よりサイト内の利便性を向上させながら「2022年度新入生のためのスタートアップサイト」を開設。長谷川次長は「オンライン授業をサポートする体制は整いつつあるのではないか」とする。(川村)