立命館大学新聞のコラム欄「海神(わだつみ)」。記者が日々の思いを語ります。
1年が早かった。葉が地面に落ちていくように、秒針が進むように。
昨年3月末、新入生だった私はオリエンテーションのためキャンパスを訪れた。曇り空の下、おどおどしながら教室に入った。広い教室に間引きされた席。周囲の新入生との間に会話はなかった。期待よりも不安が大きかった。
5月、完全にオンライン化された授業が始まった。学部生と話せるのが無性に嬉しかった。何かを教える先生の声や議論を交わす学生の声が薄暗い自室に響き渡る。授業が終わるやいなや静寂が広がるそこで何度も物悲しさを感じた。
そして2回目の春学期。
前髪の分け目を変えた。心なしか視界が明るくなった。ハンドクリームを変えた。鼻を掠める新たな香りが心地良かった。冬物のコートを押入れにしまい込んだ。何だか体が軽くなって、空に浮いた気分だ。
昨年の春と社会の状況はそんなに変わっていないかもしれない。来たる春に向けてせめてもの気持ちで自分をアップデートしてみた。昨日と今日。ほんの些細な移ろいが明日への切り替えに繋がる、そんな不思議な心持ちだ。
何となく「1回生」を過ごした実感のないまま、数字だけが重ねられていく。そんな大学生活だと思っていた。しかし、今我が身が感じる変化は1年の蓄積があったからこそのものではなかろうか。少しだけ、自分の1年に自信を持つことが許されたような気がした。この気持ちを胸に2年目の春を歩み出そう。(佐野)