立命館大学新聞のコラム欄「海神(わだつみ)」。記者が日々の思いを語ります。
去年とは違い、今年は突然春がやってきた。そのせいか桜の開花も遅れてやってきたように思う。待ちわびた春に桜はどのような思いでいるのだろうか。
春を待ちわびていたのは桜だけではないはずだ。この2年、思い切り羽を広げたくても広げることができず、もどかしい思いをした人たちもいるだろう。時間だけが過ぎて焦る毎日が繰り返され、春を迎えた人が多いのではないだろうか。いつか読書をしていたときに目にした「翼が痒い」という言葉がより一層、その気持ちを掻き立てる。
一方で、些細な出来事や場所、想いは私たちのなかに積み重なる。琴線に触れるものがふと周りを見渡した時に増えていることに、今になって気が付く。ある教室は、誰かにとっては新入生オリエンテーションが行われた懐かしい教室であり、誰かが「大学の授業を受けているな」と実感した大講義の教室である。構内の道は、ある時は赤い落ち葉で彩られ、あるときは真っ白に雪化粧をする。またあるときには薄桃色の花びらが舞う。その人の置かれた環境や生きてきた人生が、場所の切り取り方を変えていく。
これからキャンパスに足を踏み入れる新入生のあなたにとって、キャンパスが些細な思い出の地になるだろう。またその場に足を踏み入れた時、写真を見返した時、思い出して心が温かくなるかもしれない。あなたにとってこれからの大学生活がそのような場と思い出で溢れるものとなることを祈っている。