文化・芸術

非日常的な世界「デ・キリコ展」 神戸市立博物館で【文化ガイド】

「デ・キリコ展」が14日に神戸市立博物館(神戸市中央区)にて開幕した。本展は20世紀を代表する画家の一人、ジョルジョ・デ・キリコの神秘的な作品を紹介する大規模な回顧展。絵画、彫刻など国内外から集められた100点以上の展示が来場者を魅了する。

イタリアの画家ジョルジョ・デ・キリコ(1888~1978)は、形而上(けいじじょう)絵画(一見無関係なモチーフが空間に配置され、非日常を表現する絵画)の代表的な作家で、20世紀のシュルレアリスムの画家たちに大きな影響を与えた。本展では、デ・キリコが約70年にわたって制作した作品が、「イタリア広場」「形而上的室内」「マヌカン」などのテーマに分けて紹介されている。

第1章 「自画像・肖像画」は、デ・キリコが生涯にわたって取り組んできた自画像や、彼の身近な人々の肖像画の展示。デ・キリコは自己を古風な出で立ちで表現する。西洋絵画の伝統的な材質を意識した表現技法も特徴。

《17世紀の衣装をまとった公園での自画像》の前でポーズを取るジョルジョ・デ・キリコ、1968年、自宅のサロンにてPhoto: Walter Mori(提供:ジョルジョ・エ・イーザ・デ・キリコ財団)

第2章 「形而上絵画」は、ドイツの哲学者フリードニヒ・ニーチェの思想に影響を受けた作品群の展示。デ・キリコはそれらに「形而上絵画」という名を付けた。ゆがんだ遠近法や脈絡のないモチーフの配置、幻想的な雰囲気によって日常の奥に潜む非日常や神秘、謎を表した革新的な作品などが展示されている。

《形而上的なミューズたち》1918年、油彩・カンヴァスカステッロ・ディ・リヴォリ現代美術館(フランチェスコ・フェデリコ・チェッルーティ美術財団より長期貸与)© Castello di Rivoli Museo d‘Arte Contemporanea, Rivoli-Turin, long-term loan from Fondazione Cerruti © Giorgio de Chirico, by SIAE 2024

第3章「1920年代の展開」は、デ・キリコが頻繁に用いたマヌカンに加え、「室内風景と谷間の家具」「剣闘士」などを主題とした作品を展示。彼は広場や屋外にあるはずの像や彫刻を、室内や閉じた空間に配置。逆に本来は室内にあるべき家具などを広場や屋外に置いた。この逆説的な状況は、観る者に違和感や不安を抱かせる効果があり、夢のような不条理な世界を想起させる。

《緑の雨戸のある家》1925-26年、油彩・カンヴァス 個人蔵 © Giorgio de Chirico, by SIAE 2024

第4章「伝統的な絵画への復帰:『秩序への回帰』から『ネオ・バロック』へ」は、過去の巨匠たちの傑作を研究し、これらを強く意識した作品の展示。デ・キリコは1920年ごろから、ルネサンス期の作品、次いで1940年代にルーベンスやヴァトーなどに加えて、19世紀フランスの新古典主義などの作品に傾倒し、伝統的絵画表現へと回帰する。

《風景の中で水浴する女たちと赤い布》1945年、油彩・カンヴァス ジョルジョ・エ・イーザ・デ・キリコ財団 © Fondazione Giorgio e Isa de Chirico, Roma© Giorgio de Chirico, by SIAE 2024

 第5章「新形而上絵画」は1960年代後半からの作品を展示。亡くなるまでの10年余り、デ・キリコは改めて形而上絵画に取り組んだ。この時期の作品は「新形而上絵画」と呼ばれ、デ・キリコ自身の過去の作品などを再解釈し自由な形で組み合わせていることが特徴。

《燃えつきた太陽のある形而上的室内》1971年、油彩・カンヴァス ジョルジョ・エ・イーザ・デ・キリコ財団 © Fondazione Giorgio e Isa de Chirico, Roma© Giorgio de Chirico, by SIAE 2024

 

また、絵画に限らず、挿絵や彫刻や舞台衣装、スケッチなども展示されている。音声ガイドのナビゲーターは役者・ムロツヨシさん。本展のテーマ曲であるクロード・ドビュッシー作曲の『喜びの島』は世界的ピアニスト・辻井伸行さんが演奏。

来場者が撮影可能な作品やフォトスポットも用意されている。また、本展で展示されている作品のポストカードをはじめ、ヒグチユウコさんとコラボレーションした缶バッチなどを販売。イタリア菓子店「アマレーナ」とコラボレーションしたスイーツは神戸会場限定。神戸市立博物館周辺の商業施設では本展とのコラボ企画が行われている。

周辺の商業施設で配布されている割引券付きの本展ステッカー=15日、神戸市中央区※配布条件および配布期間は、各施設公式サイトにてご確認ください。

本展の会期は12月8日(日)まで。開館時間は午前9時30分から午後5時30分(金曜日、土曜日は午後8時)まで。 展示室への入場は閉館の30分前まで 。休館日は月曜日、10月15日(火)、11月5日(火)。ただし10月14日(月・祝)、11月4日(月・振休)は開館。入場料金は大学生当日券1000円。詳細はデ・キリコ展神戸会場公式ホームページ(https://www.ktv.jp/event/dechirico/)を参照。

(長尾・今井)

本展のポスター

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