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「発達障害を知る・学ぶ」ウェビナー開催 誰もが住みやすい共生社会づくりへ

D&I推進室提供

3月2日、ダイバーシティ&インクルージョン推進室(以下、D&I推進室)が企画する「発達障害を知る・学ぶ―よりよい人間関係と過ごしやすい社会づくりに向けてー」が開催された。講師の信州大学医学部の本田秀夫教授は精神科医師として発達障害の臨床と研究に従事している。※1
当日のウェビナーでは全体を通して、発達障害に関する基本的な情報や、誰もが住みやすい共生社会づくりに向けたポイントについての講義が行われた。

ウェビナーの前半で本田教授は発達障害に関する基本的な情報を共有した。
その中で勘違いされやすい、発達障害に関するご認識を挙げた。「発達障害についてよく挙げられる突発的な感情の変化は、発達障害本来の特性ではない」と話し、こうした感情・情緒の変動は発達障害とは独立してあらわれることがあるという。本田教授は「こうした本来の特性に加えて、複合的に見られるケースに、より注目して、社会的配慮が行われる必要がある」と指摘する。また本田教授は主観的な症状の判断にも注意を呼びかけている。「発達障害に特有の症状が悪化しているという相談を受けることが多い。しかし症状は自然経過で悪化しないと思っておいた方がよい」とし、そのほとんどの原因が当事者自身ではなく、取り巻く環境の変化※2にあると指摘している。

また発達障害の人の特徴の一つとして「過剰適応」を挙げた。これは自分のやりたいことや都合を過剰に我慢して、周りの人や環境、状況に無理に合わせようと頑張りすぎる特性であるという。周りの人も自分と同様に我慢していると思い込み、過剰に環境に適応しようとするこの特性のため、一般の人と比べて対人関係に疲れを感じやすいそう。
こうした過剰適応などの発達障害に見られる特性に対し、本田教授は合理的配慮の必要性を説いている。合理的配慮とは特徴や場面によって生じる異なる困難を取り除くために当事者からの申し出をもとに調整すること。「まずは環境を配慮することで特性によるハンディをなくせるように努力する。重要なことは、こうしたことは発達障害以外の人にもわかりやすいユニバーサルデザインとなることだ」とする。

さらに今後の社会における、コミュニティケア促進の新たなキーワードである「ネスティング」についても触れた。「巣」という意味の英単語(nest)から派生したネスティング(nesting)は、活動拠点となる小さなコミュニティとなるnestを計画的に作成し、大きなコミュニティに入れ込んでいくことである。

出典:「発達障害を知る・学ぶ―よりよい人間関係と過ごしやすい社会づくりに向けてー」当日資料より

これは多様性が認知された大規模なコミュニティの中においても、自身と似たアイデンティティを持つ人同士で集まった小さなコミュニティを確保するものであるという。
この取り組みを強化することで、本人たちが自分自身をマジョリティーと捉える機会をつくることができ、生きやすい環境整備につながると話す。

最後に本田教授は共生を「相性が最悪な人とも同じ社会で暮らすこと」とし、共生社会を築いていくためには「すべての人が、自分とは異なる多様な視点があるということを知識として持っておくことが大切」と語る。「異なる立場の人を阻害したり、不要な攻撃をしたりしない。これらは今、多くの人ができていないことで自分の視点を他者に強要しないことが求められている」と意識改革を呼びかけた。(奥野、西澤)

※1 他にもご自身のYoutubeチャンネルでの活動や子育てを幅広く支援するモバイルアプリの制作なども手掛けている。

※2 対人関係の変化、クラス替えや職場でのポジションの移動といったものが挙げられるという

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